第2回 「サーキュラー・バイ・デザイン」とは何か
連載2回目となる今回は、ルクセンブルクパビリオンの建築における中核的なコンセプト「サーキュラー・バイ・デザイン」(循環型設計)についてご紹介します。
「サーキュラー・バイ・デザイン」は、日本語では「循環型設計」、あるいは「解体を前提としたデザイン」とも言い換えられます。循環経済の実現を目指し、ルクセンブルクパビリオンは設計段階から建物の解体および部材の再利用を見据えた計画がなされています。

©GIE Luxembourg @Expo 2025 Osaka
一般的に建設業界における循環経済達成はコンセプト段階や実証実験のレベルのことが多く、日本でも建築資材のリサイクルは極めて進んでいるものの、建築部材自体の再利用はまだ一般的とは言えません。ルクセンブルク政府は、約10年前から建設分野における環境負荷の低減を重要な政策課題として位置づけ、持続可能な建築やインフラのあり方を検討してきました。その中で、建物の循環性達成における課題や有効な政策が議論されています。国際博覧会への出展にあたっても、開催期間がわずか6か月と限られていることを踏まえ、パビリオンをいかに循環型のモデルとして実現するかということに重点が置かれました。循環経済は大阪・関西万博の核となるテーマでもありました。
こうしたルクセンブルク政府の方針のもと、本国でのデザインコンペティションにおいて採用されたのがルクセンブルクの建築事務所STDMと舞台美術事務所ジャングルドナーブズによるコンソーシアムです。両者は、建設時に建設業界から素材や部材を一時的に「借りる」形で活用し、閉幕後にはそれらを再び市場に戻すという発想で、「サーキュラー・バイ・デザイン」を具現化しました。
ルクセンブルクパビリオンの躯体は、主に以下の4つの要素から構成されています。
・膜屋根
・コンクリートメガブロック
・外装パネル
・鉄骨構造




これら4つの主要部材は、パビリオンの全体重量のおよそ80%を占めています。閉幕後にパビリオンを解体し、これらの主要部材をそのまま回収することができるような構造とすることで、パビリオンの資材全体の少なくとも80%を循環させることを目標として掲げました。
その実現に向けて、設計時にはいくつかの工夫がなされています。まず、それぞれの部材を標準寸法のまま使用することで、解体後にそのまま市場に戻し再利用できるように設計されました。また施工においては、加工や接着、溶接をできる限り避け、解体しやすい施工法が採用されました。
一方でこうした条件は設計する上での制約にもなります。例えば、一般的な鉄骨部材の長さは最大でも10~12メートル程であり、この制約が空間の規模や構成に影響を与えます。結果として、ルクセンブルクパビリオンは一つの大きな建物ではなく、いくつもの小さな空間が連なる構成となりました。
演出を担当したジャングルドナーブズはこの独特な構造を活かし、パビリオンをルクセンブルクの物語を章立てで体験できる空間としてデザインしました。来場者は3つの部屋「Act1」「Act2」「Act3」を巡りながら、多様な視点からルクセンブルクという国に触れることができました。さらに、これらの空間全体を大きな膜屋根で覆うことで、多様性と一体性をあわせ持つルクセンブルクを象徴するパビリオンが実現しました。
©GIE Luxembourg @Expo 2025 Osaka Vincent Hecht
このように標準寸法を維持し、各部材を極力損なわずに構築されたパビリオンは、閉幕後に解体され、それぞれの部材が再び活用可能な状態へと戻されることになりました。また、日本国内で調達した資材で建設し、解体後に日本国内で再利用させることが目標として掲げられました。日本の関係者から「国内での建築部材の再利用には高い壁がある」と言われましたが、ルクセンブルクパビリオンデザインチームとコミッショナーは目標を曲げず、日本のパートナー企業と連携しながらそれぞれの部材について再利用のあらゆる可能性を検討しました。
その結果、上記の主要4部材すべてについて再利用先が特定されました。さらに内装や音響設備、家具等についても、可能な限り廃棄を避け、次の用途へと引き継ぐことで循環経済の徹底的な実現を追求しました。
パビリオンの躯体を構成していた部材や、使われていた家具が今後どのように再利用されていくのか。具体的な内容については、今後の連載で順次ご紹介してまいります。是非引き続きご覧ください。
本件に関するお問い合わせ先はこちらまで:
ルクセンブルク貿易投資事務所 松野・星
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